酒飲んで、車いじって、トロンボーン吹いて、寝る。そんな生活に憬れる今日この頃。
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雪かき日記

出典は作者不明のネット上の小話「Diary of a Snow Shoveler」。細部が少し違うバージョンがいろいろあるそうです。
faireal.netの邦訳が面白いので転載。原文はGoogle検索で出てきます


映画「シャイニング」をイメージしながら読むといいかも。


雪かき日記

12月8日
午後6時、雪が降り始める。初雪だ。妻とわたしは窓辺でカクテルを傾けながら、空から落ちてくる柔らかで大きな雪片を、何時間も眺めていた。グランマ・モーゼスの絵のようだ。とてもロマンチックで、新婚時代に返ったような気がした。雪は素晴らしい。
12月9日
目が覚めると、辺り一面、純白の雪の原だった。何て幻想的な光景だろう。世の中にこれ以上美しい場所があるだろうか。ここに越してきて良かった。これまでの人生でわたしがした最高の選択だ。最初の雪かきをする。少年時代に返ったようだ。家に続く私道と歩道の両方をやった。午後になって除雪車がやってきて、私道に雪を飛ばしていったので、もう一度雪かきを楽しめた。何て楽しいんだろう。
12月12日
太陽が出て、せっかくの雪が溶けてしまった。がっかりだ。隣人は、心配するなと言う。間違いなくホワイトクリスマスになるそうだ。雪のないクリスマスなんて最悪だ。「冬が終わるまでには、もう見るのもいやだっていうくらい雪が降りますよ」とボブは言う。見るのもいやなんて、あり得ないと思う。ボブは親切な人だ。隣人がこういう人で良かった。
12月14日
ああ、雪! 素晴らしい雪! 昨夜は20センチ積もった。気温は-29度まで冷え込んだ。この寒さであらゆるものがキラキラ輝いている。風が冷たく息ができないほどだったが、私道と歩道の雪かきで体が暖まる。これぞ人生! 午後にまた除雪車が来て、雪かきした場所が全部埋まってしまった。雪かきがこんなに大変だとは思わなかったが、いい運動になるというものだ。息が切れないといいんだけどね。
12月15日
50センチ積もるという予報。バンを売って四駆のブレイザーを買った。妻の車にスノータイヤ、予備のスコップも二本購入。食糧も買いだめしておく。妻は停電に備えてまきのストーブも欲しいという。おいおい…。アラスカに住んでるわけじゃないんだぜ。
12月16日
今朝は吹雪だった。私道に融雪剤をまいているとき、氷の上ですべって尻を強打した。すごく痛かった。妻はそれを見て一時間も笑い続けた。ちょっとひどいと思う。
12月17日
マイナス何十度という日々が続いている。道路は氷結していて、どこにも行けない。 5時間停電した。暖をとるために毛布を何枚も重ねてくるまった。腫れ物に触るような気持ちで、妻の顔をじっと見る。やっぱりまきストーブを買っておくべきだったと思うが、妻には言わなかった。くそ、妻の方が正しいなんて…。それにしても自分の家の居間で凍えかけているなんて信じられない。
12月20日
停電は直ったが、36センチの降雪。さらに雪かき。丸一日つぶれる。あのむかつく除雪車が二度も来た。近所の子に雪かきを手伝わせようとしたが、ホッケーをやるから時間がないという。うそをついていると思う。ボブは自分で雪かきをしないなら市がやってくれて後から料金を請求するという。うそだと思う。
12月22日
ボブの言ったとおりホワイトクリスマス間違いなしだ。いまいましい雪め、今日また33センチ降った。おまけにものすごい寒さで8月まで解けないのではないかと思うほどだ。雪かきのために外に出る身支度に45分もかかったが、そこで小便がしたくなった。服を脱いで、小便をして、また重装備に身を包む。雪かき、雪かきでもうくたくただ。ボブのトラックに除雪機が積んであるのを見て、冬の残りは金を払ってボブに頼もうと思ったのだが、彼は忙しくてできないという。あの野郎、うそをついていると思う。
12月23日
今日の積雪はたった5センチ、-17度まで暖かくなった。朝、妻が家の前の飾り付けをしてほしいと言う。何を考えてるんだ…バカか? そういうことは一カ月前に言ってくれれば良かったのに。妻は「言ったけど無視された」と言う。うそこけ、くそったれ。
12月24日
15センチ。雪が固くなって、スコップでは歯が立たない。シャベルが壊れてしまった。心臓発作が起きるかと思うほど激怒したこと。くそ、あの除雪車を運転しているばかめ、見つけたらきんたまを引っつかんで雪んなか引きずり回してやるぞ! おれには分かっているんだ。あの野郎、角のところに隠れていて、おれが雪かきを終えるのを見計らって時速160キロで突っ走って行くんだ。おれが雪かきしたところ全部に雪をまき散らしながら! 夜、妻はいっしょにクリスマスキャロルを歌ってプレゼントを開けようとせがんだが、つきあえなかった。除雪車野郎を見張るのが先だ。
12月25日
メリー…うぐぐぐ…クリスマス。夜、さらに50センチのあsdfghっっっっっk。雪でどこにも行けない。雪かきのことを考えると、血液が沸騰しそうになる。雪なんか嫌いだ。そこにあの除雪車の運転手がやって来て、寄付をお願いしますという。スコップで頭をぶん殴ってやった。妻はわたしの態度が悪いというが、彼女はばかだと思う。今度『素晴らしき哉、人生』を見せてみろ、ぶっ殺してやるからな。
12月26日
依然として雪で出れない。何だってこんな土地に引っ越してきたんだろう。これは全部、妻の希望でやったことだ。まじでむかついてきた。
12月27日
気温が-34度まで下がり、水道管が凍ってしまった。 14時間待たされたすえ、配管工が来た。全部のパイプを取り替えて15万円とられた。
12月28日
-29度まで暖かくなる。依然、雪に閉じ込められている。あのアマ、むかつくなんてもんじゃねえ!
12月29日
さらに25センチ。ボブは屋根の雪下ろしをしないと屋根が抜けるという。そんなばかな話は聞いたこともない。ボブはとんでもないアホだ。おれがそんなうそに引っ掛かるとでも思っているのか。
12月30日
屋根が抜けた。除雪車の運転手が、頭のこぶのことで、120万の賠償を求める訴訟を起こした。妻は実家に帰ってしまった。いいやっかい払いだ。 23センチの予報。
12月31日
家の残骸に火をつける。これでもう雪かきは要らない。
1月8日
とてもいい気分だ。いつも出されるあの白い小さな錠剤が、とても気に入った。なんでわたしはベッドに縛り付けられているのだろう?